2009年4月4日土曜日

「国宝 鑑真和上展」

奈良国立博物館で開催の「国宝 鑑真和上展」に行ってきました。



唐招提寺では、足掛け10年に渡って行われていました 金堂(国宝)の
解体修理が、いよいよ今年の秋に完了し新しい姿でお披露目されます。

この展覧会は、金堂の平成大修理記念として開催され
唐招提寺の歴史的な意味と、幾多の困難も乗り越えて来日した鑑真和上の
偉業を讃えるとともに、当時の唐の円熟した芸術を背景に花開いた
天平時代の仏教美術の至宝を紹介するものです。

主な出陳品としては、8世紀に制作された日本最古の肖像彫刻であり、
唐招提寺の精神的象徴として1200年以上にわたり大切に伝えられてきた
国宝・鑑真和上坐像を中心に国宝12件、重文36件を含む74件が展示公開
されています。

『不思議だ。ただ見ているだけで、心が満たされてくる。』
これは展覧会のパンフレットに書いてあったキャッチフレーズ。

帰宅してから、見てきたものを頭の中や心の中で思い出して反芻して
この言葉に、本当にそうだなと思いました。
何と言いましょうか・・・。心が豊かになって満たされてくる。
美しいものを見て、心が温かいもので溢れたような気持ち・・・。

語彙が豊かでないので、うまく言い表せられないのですが
今回の展覧会は「至宝」「芸術品」「美しい宝」・・などを
たくさん見せていただけて大変有り難いこと、というのが率直な感想。

以前、奈良博で開催された「国宝 法隆寺金堂展」では
展示室全体が仏教空間と化して、崇高な感じを抱いたのですが
今回の展示空間は至高の芸術空間とでも言い表せましょうか。

まず、第一展示室の展示空間で「あっ」と驚いたのですが
入り口から大きく取った空間に金堂安置の梵天・帝釈天を中心に
四方に四天王像が広々と配置され、それぞれへの照明の効果が
素晴らしく美的なのです。特に増長天から映される影が綺麗です。

見どころはヤマほどあって、ひとつひとつ感想を述べていきたい
気持ちを堪えて、少し印象深かったものの感想を・・・。

美的・・・という観点からイチオシは「唐招提寺のトルソー」
として多くの芸術家に愛された『如来形立像(重文)』
衣のドレープの流線が見惚れるくらい美しすぎます。

『鑑真和上坐像』も勿論、今までに何度も拝顔していますのに
御影堂の厨子の中にいらっしゃる時とは、こうも印象が違うのかと
驚きです。背中のところ、首にできた深い皺がとても人間らしく
それでいて敬い奉りたい衝動に駆られる何かオーラのようなものが
発せられているように思えるから不思議。

和上の出家から渡海そして遷化までを描いた『東征伝絵巻』
今回の解体修理まで金堂の屋根を飾っていた創建当初の『鴟尾』
『東山魁夷画伯奉納の障壁画と襖絵』『金堂の天井支輪板』など
重量級の展示品の中で、珠玉の輝きを放っていた『押出仏』の
かわいらしさも忘れがたいものです。

そして、一番 ”私好みの・・”といえば
『方円彩糸花網』でしょうか。
前期(4/4~4/26)期間は複製品が展示されていますが
複製品(といっても江戸時代の作だったような)でも
これほどに心惹かれるのだから、中国・唐時代の本物(国宝)が
展示される後期期間が、もう今から待ち遠しいです。
『方円彩糸花網』というのは、『金亀舎利塔(国宝)』の中の
白瑠璃舎利壺を包むものだそうで
色彩といい配色のバランスといい図柄といい
とても素敵でとても洒落ているのです。


・・・書き出していくと、とまらないのですが
仏教や仏像に興味がない方でも十分堪能できる展覧会だと思いました。

格調高い展覧会なのに自分流の印象を書き連ねて申し訳ないですが
これこそ、美術芸術を学ぶ人達に見てほしい展覧会だと思います。

「国宝 鑑真和上展」

会期:4月4日(土)~5月24日(日)
会場:奈良国立博物館 東・西新館
休館日:毎週月曜日(ただし5月4日は開館)
開館時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで)
     ※4/24(金)以降の金曜日は19:00まで
観覧料金:大人1200円
     ※近鉄の主要駅、JR西日本の主な駅のみどりの窓口にて
      前売り券(1000円)を会期中でも販売。
     ※4/22,5/22は「夫婦の日」につき
      夫婦で観覧される場合は一般料金の半額となります。
会場内での法要:◆朝の法要:会期中毎日9:45~
        ◆唐招提寺一山による釈迦念仏会の再現:5/6 14:00
関連イベント:映画上映「天平の甍」
       4/12・4/17・4/22・5/3・5/16・5/22
       奈良国立博物館 講堂にて。無料。
公開講座:
・4/11(土)「共結来縁」 松浦俊海(律宗総本山唐招提寺長老)
・4/18(土)「鑑真和上と日本文化」 東野治之(奈良大学教授)
・4/25(土)「鑑真和上の教え」 西山明彦(律宗総本山唐招提寺執事)
・5/9(土)「唐招提寺金堂の当初復原案―解体調査より判明したこと―」
       田中泉(奈良県文化財保存事務所主査)
・5/23(土)「鑑真和上像と唐招提寺の仏像」
       稲本泰生(奈良国立博物館学芸部企画室長)
  ※各回とも13:30~15:00(開場13:00、講堂入口で入場券を配布)
   奈良国立博物館 講堂にて。聴講無料。定員200名。
サンデートーク :
・4/19(日)「唐招提寺2010プロジェクト その10年の道のり」
       松田幸雄(TBSテレビ事業局担当局長兼文化局長)
・5/17(日)「唐招提寺の古文書について」
       野尻忠(奈良国立博物館学芸部研究員)
   ※各回とも14:00~15:30(開場13:30)
    奈良国立博物館 講堂にて。聴講無料。定員200名。

関連サイト:唐招提寺
       唐招提寺2010プロジェクト


昨年6月に唐招提寺を訪れた時の日記はこちら

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