2009年2月7日土曜日
修二会の「前行」について
二月堂修二会の期間は3/1から3/14までと
思われている方も多いと思います。
実は、3/1~3/14の期間は修二会「本行」で、
その前に「前行」という期間(2/20~2/末)があるのです。
二月堂で行われる「本行」へ向けての準備期間である「前行」は
また「別火」とも呼ばれ、期間を二つに分けて
2/20~2/25までを「試別火(ころべっか)」
2/26~2/28までを「総別火(そうべっか)」と区別します。
11人の「練行衆(れんぎょうしゅう)」と呼ばれる僧侶(練行僧)たちが
本行に先立ち、別火坊(べっかぼう)という坊(戒壇院内にある)に篭り
行法中の寝起きを共にして、供え物や身に付ける物の準備や
本行へ向けて精進潔斎をする期間であります。
この「別火」期間中の儀式や行事としては
2/20 19:00 ●別火入り●
練行衆が戒壇院の別火坊に篭もり
一般の生活とは別の世界へ入り込みます。
2/21 13:30 ●試みの湯●
行法中(3/1-3/14)に入浴する風呂に試みに入浴する儀式です。
2/23 9:30 ●花拵え●
仏に供えるツバキの花を、たらの木を芯にして紙で造花します。
花芯は黄、花びらは白と紅の象徴的なツバキの花は、およそ400個。
その他、ナンテンの実を竹に装飾したり、灯りの燈芯などが準備されます。
2/21、2/25 13:00 ●社参(しゃさん)●
大仏殿、開山堂等の諸堂を巡拝し、参篭したことを報告します。
25日の社参は娑婆との別れの意味も含まれています。
2/27 18:00 ●衣祝儀(ころものしゅうぎ)●
行法中に着用する衣(重衣)の着始めの儀式。
重衣の下には紙衣(かみこ)という和紙でできた衣が着用されます。
2/27 18:30 ●貝の吹き合わせ●
2/28 15:00過ぎ ●練行衆、別火坊出発●
2/28 16:00頃 ●練行衆、二月堂参篭所に入る●
2/28 18:00 ●大中臣祓(天狗寄せ)●
などがあります。
別火坊の中で行われる儀式などは一般に見学できませんが
「社参」など、練行衆が東大寺境内内を巡拝される行事は
見学可能です。(「社参」見学の様子はこちらに。)
トップの画像は昨年の社参の様子を撮影したもの。
昨年、奈良倶楽部通信では「二月堂修二会(お水取り)」について
『修二会こぼれ話』①~⑲として
お水取りの行を見学した様子などをまとめています。
その中の『修二会こぼれ話②』に「別火」の詳細を載せていますのでご参照下さい。
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一応、「別火」の詳細を転載しておきます。
↓ ↓
◇試別火では、本行での声明の稽古、須弥壇を飾る椿の造花作り、
沢山の灯明の灯心作り、練行衆が着る紙衣の準備、
二月堂内で履く「差縣(さしかけ)」の修理など、
昔ながらの方法で人々の手によって準備が施されます。
◇総別火の期間になると、練行衆の出で立ちも紙衣になり、
糊たき、法螺貝の稽古など、
より厳しい制約の中で修行が進められます。
◇「別火」とは世間と火を別にするということを意味しますが、
別火坊では修二会の準備のために新たに起こした火を使って生活をします。
◇別火坊入りした練行衆は、世間の火にあたったり、
別火坊以外の火を使った食事を取ったりすることが厳しく禁じられます。
◇まだ試別火期間中は、自坊に洗い物を持って帰ったり、
境内であれば所用をすますために日中であれば外出することもできますが、
◇総別火になると行としての規制がさらに厳しくなり、
いでたちも紙衣(かみこ)という紙の衣となり、特定の場所以外では私語も一切禁止となり、
そろっての食事等以外は湯茶も自由には飲めず、所作、作法も厳しくなり、
部屋の外に一つある火打ち石で点火した火鉢以外は一切火の気がなくなってしまいます。
勿論外出などは論外で、部屋から出るときは屋内でさえ白鼻緒のわら草履をはき、
各自一枚所持する「てしま(ござの一種)」の上以外は他の場所に座ることさえできなくなってしまいます。
・・・・前行の始まる2/20からお水取り満行の3/15まで
ほぼ一ヶ月、とても長い期間を厳しく律して
祈りと修業のために精進される「修二会」の行。
炎が舞い落ちる「お松明」だけが修二会ではないことを心に留め
宿泊業に携わる自分自身がお水取りを観光として捉えること無きよう
この期間を過ごしていきたいと思っています。
小さなホテル奈良倶楽部