2009年1月20日火曜日

「アンドリュー・ワイエス~創造の道程」展

愛知県美術館「アンドリュー・ワイエスー創造の道程」展へ行ってきました。



名古屋まで出かけることを少し躊躇していたのですが
めずらしく夫がどうしても行きたいと希望しましたので
彼に連れて行ってもらうような形で出かけました。

結果は、本当に行ってよかったです!
美術館の出口で「誘ってくれてありがとう」と思わず呟いてしまいました。

画集でお馴染みながら、私達は本物をまだ観たことがなかったのです。
今回の展覧会では、「創造への道程(みち)」と副題があるように
一枚の作品が出来上がるまでの道程を
鉛筆デッサンの素描から習作の水彩画、そして完成作品のテンペラ画まで
一つにまとめてワイエスの「制作の過程」がよくわかるように展示構成されています。 (完成作品は全体の4分の1くらいという少なさですが。)

この「制作の過程」が彼の「創造へのプロセス」「試行錯誤のプロセス」を
追う興味深いもので、完成作品の少なさなど全然気にならない
中身の濃い非常に見応えのある展覧会になっています。

(習作の水彩画は、それ自体で十分に作品になるくらい素晴らしく
完成作品のテンペラ画よりも好きなものもありました。)

また習作から完成品への間にモチーフや構図が大幅に変更になっているのもあったり、一部だけを取り出したり、主題自身が変わったり・・・と
そんなところも楽しめる作品展です。

ただ、ちょっと我が生き方を反省してみたり振り返ってみたりも
してみたくなる展覧会でもありました。

たくさんの素描や習作でワイエスの創造への過程を味わいながらも
彼の制作への真摯な態度を理解するにつれ、もう少しきちんと生活
しなければと思った鑑賞者もきっと多いはずでは・・?(私だけ?)


ワイエスのほとんどの作品は彼の出身地ペンシルヴェニア州と
別荘のあるメイン州を舞台に描かれていて
どことなく荒涼と寂寥感漂う風景のところのように感じるのですが
思えば、アメリカといえば西海岸かNYかワシントンくらいしか想像したことがなかったなあ。いつかワイエスの住んでいたところを訪ねてみたいものです。

それにしても、普通の人が見過ごしてしまうような風景や物、
歪んだバケツや納屋の道具など、ありふれたものへの美への感覚や
透き通る空気や光りや、そよぐ風の描写や
心寄せた家や人に深く関わり深い愛情を持って描ききるという態度に
魂を揺さぶられるくらい魅せられました。

最後に、昨年秋、ワイエスへのインタビュー映像の中での彼の言葉。
「年を取っても何かが自分の想像力を刺激したら 素早く行動すべきなんだ」
素敵な言葉だと思いました。

アンドリューワイエス 2009年1月16日91歳にて永眠。


「アンドリューワイエス~創造の道程」展

愛知県美術館にて 3/8まで開催中。


もうひとつ、作品展のキャプションに書いてあったワイエスの言葉。

「私は季節の中でも冬や秋が好きだ。
風景の中にある骨組みや孤独感、死に絶えたような雰囲気が感じられる。
何かがその下に隠れていて、物語の全ては明らかにされていない。
そんな気がするのだ。」

時間は静かに流れ、冬が過ぎれば春が来る。
冬の下に隠れている春の息吹・・・

このワイエスの言葉に誘発されて私は・・・明日へ続く
(美術ネタが続きましたので久しぶりに冬の奈良特集です☆)


おまけの画像:美術館のあるオアシス21の建物

   
      
          

小さなホテル奈良倶楽部