2008年7月11日金曜日

仏像保存と展示についての私感~その3

果たして仏像保存とダイナミックな展示は両立するのでしょうか?

私の中で一つ気になる場所があります。

宇治の平等院にあるミュージアム『鳳翔館』。
その名の通り、美術館です。

 鳳凰堂(後から)
鳳翔館外観 
(撮影2007年9月)

以前からの宝物館(1965年竣工)が老朽化のため
新しく建てられたもので2001年開館です。

コンクリートのモダンな建物ですが、
小高い丘に建物をうまく埋め込む構造で
千年の歴史を持つ平等院の景観に配慮された造りになっています。
(設計:栗生明氏)

通路 
 
通路の壁面はコンクリート打ち放しのようですが
型枠の木目がはっきりとわかるような細工があり、
これが建築的には中々すごいものらしいです。
(この時同行の息子談)


昨年の9月に訪れた時の記憶なので(その時は保存と展示の関係に
ついてそれほど興味を持っていなかったので)
記憶が鮮明な展示室についてのみ記します。

百聞は一見にしかず、このような感じです。


鳳凰堂の中の52体の雲中供養菩薩の内、26体がこうして展示されています。

以前2000年の夏に鳳凰堂を訪れた時も52体の内26体がはずされていました。
何でも東京国立博物館での『平等院展』に出品中だと聞いたのですが、

その展示照明が大変素晴らしく、
担当された東博の照明デザイナー木下史青氏は
この『平等院展』で一躍注目を浴びるようになり、
現在も革新的で素晴らしい照明デザインで活躍されています。
(著作「博物館へ行こう」を読んですっかりファンになってます。)


鳳翔館の開館が2001年。
おそらく東博の展示仕様がそのままここで使用されているのでしょうか?

ということは、これが木下さんのデザインされたライティングなんだ!

雲中供養菩薩・・・
極楽浄土に向かう人を音楽を奏でながらお送りする菩薩さま。
まるで天使のようですね。

どの菩薩像も表情豊かでそれぞれ顔が違いますし
手に持つ楽器も違います。

鳳凰堂の天井近くの壁面に配されている時は
そこまで細かく見えないし気がつかなかったけど
ここでこうして観られるとは!

本当に素敵で素晴らしい照明です。

他には、鳳凰堂の屋根に留まる鳳凰1対が展示されていたのが印象的。
今は屋根の上にはレプリカ、本物はこの中なんですね。

美術館という立場で鑑賞される展示を主眼に保存管理もしっかりこなす。
「保存と展示」がうまく両立したいい例ではないでしょうか。

ただ近代建築の鳳翔館については
私は、いくら景観に配慮したとしても狭い平等院の敷地内で
少々の違和感はあるのです。
同行した息子(建築学科学生)は、仏教建築のレプリカを建てるより
返ってこの方がいいという考えでしたが。

・・・・長々と書き連ねてきましたが、
私は今、ある夢想を楽しんでます。

来年の東博でスポットライトを浴びる阿修羅像たち。
奈良に帰ってこられたら、そのときの展示そのまま
2010年に復元される予定の中金堂に配される。。。。
中金堂は保存管理も兼ねた美術館だったんだ実は!
っていう夢♪

ほんでもって、再来年の東大寺展でもね!
帰ってこられたら法華堂がいきなり木下マジックで彩られた
美の殿堂になっている・・・とか。
(きっと毎日でも通うよ、そうなったら!)

最後はちょっとはしゃいでしまいましたが、


手を伸ばせば届くところにある素晴らしい芸術環境。
恵まれた奈良の地に住みながら、
この宝物の数々にもっと触れる機会を生み出さなければ!
そして次世代、いえ、ずっとずっと先の世代まで
護り大切に伝えていかなければ!

追記>>

ただ思い浮かぶことを長々と書いてきましたが、
ここに書くことによって少しは考えがまとまるかなと
メモ的に感じていたことを「私感」という形で書きました。

書きながら私は仏像などを芸術作品として観ていると思いました。

専門的な勉強をしていない門外漢ですが、
芸術鑑賞をするのが大好きな一愛好家の立場で
こういう風に仏像展示がなされればいいのになあという感想です。

(優れた芸術作品を大切に護り保存し、
その芸術世界を一番素晴らしいやり方で、
そのものの本質・世界観に触れる機会をもっと作るということ)

こういうことをもっと掘り下げてこれからも勉強していきたいと
書きながら考えて思っています。


小さなホテル奈良倶楽部