2008年7月9日水曜日

仏像保存と展示についての私感~その1

先日の「興福寺・東金堂夜間拝観のお知らせ」のページで
ちょっと書きましたが、

実は私、あの阿修羅像の国宝館よりずっとこちら(東金堂)の方で
仏さまを拝観する方が自然で、好きなところなんです。
(国宝館はどちらかというと、保存も兼ねた展示という感じが
しないではないような・・・。)


という一文。これにも関係しますが、
この最近、漠然と心の中で思っていることがあります。

それはどういうことかと言いますと、

『仏像の保存とダイナミックな展示は両立しないのか?』

ということ。。。

仏像好きでも仏像オタクでもないのに何を考えてるやら(笑)

ただ仕事柄、仏像に詳しいお客さまとの会話の中で
知識として勉強しておかなければという面もあって、
機会があれば特別拝観や開扉の秘仏などをよく観に行きます。

何より、私は芸術的に素晴らしいものや美しいものが大好き!


でも、どちらかというと・・・
仏像に対する専門的な知識は、詳しく持ち合わせてませんし
宗教である仏教を特に信心しているわけではありません。

それだからこそ素直に仏像を観る。
どちらかというと信心ではなく美しさの対象として。
美しいものに対して自然と湧き上がる畏敬の念が
結果として手をあわせて祈るという形を取っています。

というような私なんですが、
そんな観ているだけの私でも色々思うこともあるのです。

*************

冒頭にも触れましたが、

国宝館・・・本当に素晴らしい仏像が中にいらっしゃいます。
阿修羅像はじめ八部衆それぞれの彫刻としての素晴らしさは
いつ見てもすごいなあと感じるところです。

でも個人的には国宝館はあまり好きではありません。。。

鉄筋の建物自体あまり風情あるとは言い難いですが、
何より建物の中の構造が、真ん中に柱があって、
見ていくと途中でブチッと観る集中力が切れるのです。

それに一体ずつ陳列ケースに入っているし。

1959年に建てられたこの建物、当時としては多分超一級の
大変優れた宝物収蔵庫だったと思います。

はるか古き時代の仏さまたちが今も素晴らしい形で
私達に公開されているのは、こういう保存収蔵のおかげだと
思う一方で、最近の博物館での照明を凝らした仏像展示に
すっかり眼が肥えてきた私には随分物足りなくも感じます。

あ、そうそう途中ですが、ここでお知らせです☆

来年2009年3/31より6/7まで、東京国立博物館にて
「国宝 阿修羅展」(仮称)が開催されます。


出品予定の八部衆像(八駆)、十大弟子像(六駆)が、
おそらくケースなしで展示される予定です。
「国宝 薬師寺展」のときの日光・月光両菩薩像を囲む
展示空間のような素晴らしさをまた味わうことができるのが
楽しみですね。(今度こそ観に行きたい!)

話を元に戻します。

そういうケースなしのダイナミックな展示のような、
仏像が本来あるべき姿であった所にいらっしゃる・・・

そう新薬師寺の十二神将です。


     


こじんまりとした古寺ですが、本堂(これも国宝)の内陣は
本尊の薬師如来像(平安前期・国宝)を中心に360度円陣を
囲むように十二神将(天平時代・11体が国宝)が配されてます。

こういう自然の形で見せていただけるお寺って少ないようで
そういう意味でも貴重なお寺だと感心していたのですが、

昨年、数年ぶりに訪れて久しぶりの対面だったから余計に
そう思ったのですが、ずいぶん保存状態が悪いのでは?と
びっくりした記憶があります。

今回再度訪れて確信いたしました。
素人眼で見ても随分傷んできているように思います。
特に塑像(粘土でできた彫刻)ですから心配です。
(瑠璃光なんていうステンドグラスを取り付ける工事中に
傷んだのでは?と危惧していますが。)

天平時代に造られた仏像彫刻を手の届くところで拝観できる
新薬師寺のような仏像配置をされるお寺は、
拝観する側にとっては大変ありがたいお寺であると思います。

私もお気に入りのお寺であったのですが、
。。。。。

興福寺国宝館での八部衆とのあまりの状態の違いに
こういうのってどう?と。。。
仏像の保存とダイナミックな展示は両立しないのでしょうか?

(続く。。。。)

小さなホテル奈良倶楽部