2009年10月25日日曜日

第61回 正倉院展



昨日、正倉院展初日でしたが、オータムレイトで混みあう前の時間帯が狙いめではと
夕方17時頃に博物館へ行ってまいりました。

やはり待ち時間0分ですんなり入場でき
展示ケースの廻りも一重の人垣程度でしたので
ゆっくりと鑑賞、堪能することができました。

鑑賞記はさておき、待ち時間などを先に書きましたのは
仕事柄、お客様に「どの時間帯に行くのが一番いいですか?」とよく尋ねられますもので。

過去の奈良倶楽部の予約状況から見ても
11月初めにNHK「新日曜美術館」で正倉院展を取り上げられた直後は予約の電話が集中します。
もし行かれるのでしたら、できれば10月中の夕方頃がお勧めではと思います。

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さて、正倉院展を鑑賞した感想なのですが。
感覚的な言葉で言い表すなら
私にとっては、この展覧会だけは「オーラ」が違うのです。
(もし展覧会オーラというものがあるとしたら)

1000年以上も前のものが、これほど丁寧で繊細でデザイン性に優れていて
色彩ひとつ取っても、こういう配色でくるか、と。精巧な細工の技術も素晴らしいけれど
デザインや色合いなどの美的センスというか、とにかく美意識の高さに毎回感嘆の声を上げています。

美しいものに触れるのが大好きなので、昨日も、心の芯に明かりが灯ったような感覚を抱いて
満ち足りた気持ちで会場を後にしました。

  

  
好きな色だったり形だったり図柄だったりを図録の写真からピックアップ♪
今年は工芸品の出陳が多かったので、工芸好きにはたまらない、観ていて楽しい展覧会でした。

また、刀類の展示も多かったのですが、どれもこれも実用のものなのに
これほどの装飾をするのかと感心しながらもうっとりと眺めていました。
 ←この金銀鈿荘唐大刀の装飾のセンスの良さには脱帽でした。
こういう、聖武天皇遺愛の太刀は百口ほど宝庫に納められたそうですが
恵美押勝の乱(764年)の際に出蔵されてほとんど戻ることがなかったとか。

今年、天皇陛下御即位20年記念の出陳としては
宮中で正月初子の日に、その年の豊作を祈願して行われている農耕や養蚕の事始めの儀式。
今も天皇皇后両陛下によって執り行われている儀式だそうですが
その儀式用の鋤や、蚕室を掃き清める箒などが展示されていたのは興味深かったです。

下の写真左は、鋤と鋤先の美しい文様。
写真中の箒の根元には、紫色に染めた鹿革が巻かれ、その上に金糸が。
枝先にはガラス玉が挿し込まれている。
写真右はその箒を立てる台。色や柄はキュンとなるくらい素敵。
  

 ←漆花形箱はちょっと気になるデザイン。
2種類の花形箱を交互に四口ずつ八口配列すると
全体の形は大きな八稜花形となる盛り分けの器。
遊び心が感じられて好きです。

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正倉院に伝わる宝物は本当に保存状態が良くて
一昨年の正倉院展鑑賞記にも記したように
・・・1250年以上も前の品々が、このような美しい状態で保存され残っているという事実に まず敬意を、
そしてこうして1250年もの間、脈々と次世代へ繋いでいくという意志や知性に、
日本人としての誇りを感じました。・・・と、毎回感じ入っているのですが
保存のための修復や補修、新補もされているわけで、下の写真の、花鹿が配された金銀花盤も
皿の縁から垂れる飾りや脚は明治時代の新補だそうです。



会場で観たときに感じたちょっとした違和感を帰宅してから図録で確かめたのですが
新補や修復の部分がある場合などは、その旨キャプションに書いておいていただければ
いいかなと思いました。

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夫は本日、日曜日ですが、夕方17時頃に行ってきました。
帰宅した夫に混雑具合を聞きましたら、それほどの混雑はなく
ゆっくり観られたということ。
二人で感想を話し合いながらの夕餉はオツなものです。
ちなみに夫は、男性の視点からか、刀類の素晴らしさが一番印象に残ったそうです。

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光明皇后御書「楽毅論(がっきろん)」の最後に署名された「藤三娘(とうさんじょう)」について。
「藤三娘」というのは藤原氏の三女の意味で、藤原不比等の三女である光明皇后のこと。
この時、皇后は44歳でした。

藤原氏の出であるということをこういう形で強調されることに
私は最初、ちょっと戸惑いを覚えました。
皇后という立場で44歳という年齢でありながら
未だ実家の名前を堂々と出してこられるという感覚を不思議に思ったのですが
この時代の藤原氏と天皇家の関係など複雑な政治的背景が関連もしているのでしょう。

(もし現代のこういうお立場の方が、同じように実家を持ち出した形の署名をされたなら・・・
マスコミで結構なバッシングにあわれるのではないかなと思ったり。
反対に、奈良時代にはこういう方もいらっしゃったのだから
それほど我慢されなくてもいいのではないでしょうかとも思ったり。)

こんな些細な理由で興味を持ちながら学識的なこともあまり知りませんので
会期中の「公開講座」なども受講してみたいと思っています。
(でも時間が取れるかどうかわかりませんが・・・。)

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こちらはオータムレイトチケットを購入したときにいただける記念品。
上が今年、下が昨年の記念品です。
昨年は60回目の記念の年ということで第一回目の入場券をデザインした栞でした。
61回目の今年は第二回目の入場券のデザインになっています。



(オータムレイトの前に入場しましたので、会場を出てからもう一度
この記念品ほしさにレイトチケットを購入したのですが小中学生用チケット購入でも付いてきますので。)



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いつものことながら、とりとめなく長々と書いてきました。
まだ書いていない、他にも
写経事業に従事した人たちのこととか、越前国のちょっと可笑しい名前の村のこととか
何だかかんだか色々なことを、行ってこられたお客様達との会話の中で楽しもうと思っています。

「第61回 正倉院展」の詳細は奈良国立博物館のサイト
でお確かめ下さい。
公開講座や会期中のイベントなどについても掲載されています。