そろそろおん祭の季節です。
地元の私達にとって春日大社若宮のおん祭は、
学校も2時間授業だし、お渡り式の華やかさや屋台の賑やかさで、
子供の頃から心浮き立つ楽しいお祭りでした。
でも、時代行列のようなお渡り式ばかりをおん祭と勘違いしていては、
おん祭の本当の素晴らしさを知らずにいることになります!
(これ、私のことです^^)
奈良倶楽部を始めたばかりの10数年前に、夜中の遷幸の儀、還幸の儀に初めて出かけて、
その厳かさに心打たれた思い出があります。
神さまを讃えるという、祭り本来の意味・意義を今に伝えるおん祭の素晴らしさに触れて、
「よし!毎年行こう!」とその時は思うのですが、悲しいかな・・・あまりに寒いのです!
12月の奈良、深夜の奈良は、あまりに冷えるのでした・・・。
有言不実行な私め、せめてその時の記憶を頼りに、
おん祭の素晴らしさをお客さまにお伝えしようと思っております。
ではでは・・・・☆
まず、春日若宮おん祭の起源は・・・
1136年当時、全国的な洪水飢饉のために万民が苦しんでいるのを憂えた時の関白藤原忠通公が
若宮の神さまを春日野の仮御殿に遷して、数々の芸能を奉納し丁重にお祭りしたところ、
雨は止み作物豊穣となり天下が無事に治まったので、以来毎年行うことになったと伝えられています。
(今年で872回めです。)
おん祭のスケジュールは・・・
12/15:大宿所(おおしゅくしょ)祭
12/16:若宮神社で宵宮祭
そしてそして、一番盛り上がるのが17日なんです!
12/17:深夜0:00から始まる遷幸(せんこう)の儀から、夜中23:00の還幸(かんこう)の儀まで
なんと!24時間中お祭りが続きます。
「遷幸の儀」・・・若宮の神さまをお旅所までお遷しすること。
日付が17日に変わる深夜の0時ちょうど、すべての明かりは消され真っ暗闇の中、
杉の葉を箒のように束ねた先を燃やして参道の両側を掃き清めながら、
その火の粉の小さな光の帯だけを頼りに、大勢の神官たちに守られご神体がお旅所まで運ばれます。
神官たちは榊の葉を口にあて雅楽を奏しながら、ゆっくりゆっくり1時間程かけて、春日大社若宮から一の鳥居そばにあるお旅所まで歩きます。
初めてこの遷幸の儀に参加した時の印象は、ものすごいものがありました。(鳥肌が立つような!)
荘厳で神々しいという形容詞がぴったり当てはまるような、本当に身の引き締まる思いをしたものです。
「暁祭(あかつきさい)」・・・17日深夜1:00~3:00頃
神さまがお旅所に着かれたら、明かりがパッとついて煌々とした輝きの中で神楽が奉じられます。
何だかこの暁祭、ずうっと以前に見た印象なんですが、すごく大陸の匂いが感じられました。
「神さま、ようこそお出ましくださいました~」という感じで神さまに喜んでいただけるようなものを次々と賑やかに奉納されるのですね。
「お渡り式」・・・17日お昼の12:00~
神さまの元へ、芸能集団や祭礼に加わる人々が社参する行列で、おん祭りの大きな魅力のひとつです。
中心は、平安時代から江戸時代の風俗・意匠を凝らした時代行列で、最後の大名行列は江戸時代からおん祭りに加えられたものです。
このお渡り式で使われる衣装は12/15から大宿所(もちいどの商店街の中程にあります)で拝観できます。
(写真:奈良市観光協会)
「お旅所祭」・・・17日14:30~22:30
これこそがおん祭りの本番ともいうべき中心行事です!
神さまの御前、芝居の語源といわれる芝舞台の上で、厳粛な祭典が、神楽をはじめ珠玉の古典芸能が、
夜の22:30頃まで、延々と絶え間なく奉納されます。
もちろん神さまに向かって演じているわけですから、私達は後姿しか見られません。
でも、おん祭りこそが祭りの起源・ルーツなんだとひしひしと実感できるひとときであります。
まるで生きた古典芸能博物館!
神秘的な神事が厳格に守られ、芸能においては、日本古来の神楽などをはじめ、大陸から伝来した舞楽や、中世民間におこった田楽・猿楽等の珍しい芸能も正しい形で継承されており、興味深いものがあります。
「還幸の儀」・・・17日23:00~
神さまは又、真っ暗な中、大勢の神官たちに守られて若宮神社へと還って行かれます。
神さまは24時間しか若宮から出られないらしいのです。
だから17日の24:00には戻らないといけない(・・・なんだかシンデレラのような・・・)
丸一日に及ぶ神さまのお出かけ、そして神さまのために奉納される芸能の数々、
もう何年も前に見たきりですが、本当に感動的な一日でした。
それから、遷幸の儀よりも還幸の儀の方が時間的には見やすいかもしれません。
「奉納相撲・後宴能」・・・12/18 13:00~
お祭りに関わった人々へのねぎらいの行事といわれる後宴として、奉納相撲と後宴能が、18日にはお旅所で行われます。
春日大社おん祭りについてはこちらにくわしい情報が載ってます。
また、奈良国立博物館では
『おん祭りと春日信仰の美術』展が開催されています。
12/8~1/20 くわしくはこちら
寒い寒い冬の深夜に、遠い昔の日本の神事が脈々と受け継がれている不思議。
中々味わえないものですが、いつか是非いらしてみて下さいね。
小さなホテル奈良倶楽部